俺を九尾としてではなく、うずまきナルトと一番最初に認めてくれたのは、
イルカ先生、貴方だった……
だから、やっぱり二度目の人生でも、一番に貴方に認められたい……
イルカ先生……貴方が俺を認めてくれたから……
俺は……やっと、生きていていいんだと……
生まれてきたことを……否定されない喜びを……感じることが出来たんだ……
第三話:ここからはじまる、新たな外伝忍法帳
砂の国から帰ってきたナルトを待っていたのは、
「おかえりなさい、ナルトくん」
死の森の奥に有る結界のなかの屋敷をひとりで掃除して、あまつさえ手料理を作ってまつヒナタだった。
「ただいま、ヒナタ、うまそうだな!でも先に風呂にはいって良いか?砂埃で服もマントも砂だらけなんだ・・・・・・」
「そういうと思って、お風呂を沸かしてあります」
「ありがとな」
お風呂から上がると、ナルトは甚平に着替え、ヒナタが座る食卓の向かい側に座る。
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
二人して向かい合ってこうして食事をすること、それはとてつもなく自然で平凡だが、天涯孤独のナルトにとって、
家族と、人と一緒にご飯を食べれるこの一時が何よりの幸せだ・・・・・・
「我愛羅くん達とはうまくいったんですか?」
「まぁ、なんとか……な……大蛇丸が来るのはこれからだ、先に手は打って置いたけど……大丈夫だろ、風影様だって、油断さえしてなけりゃ殺されるなんて事はないはずだってばよ……」
「そうだね」
「そういえば、明日は卒業試験だな……イルカ先生には前の時いろいろ迷惑かけたしなぁ……」
「そういえば、あの時なにがあったの?」
「あぁ、あの時は……」
そう言って、ミズキのこと、巻物のこと、イルカ先生が自分をうずまきナルトとして見ていてくれたことをヒナタに話した。
「そんなことが……それにしても、ミズキ先生、許せないね」
「とっちめてやりたいってのは確かなんだよな……更正もさせたいし……」
「それじゃあ、ナルトくん、私と一緒に試験、落ちて?」
「えっ!?」
突然何を言い出すのかと驚くナルトにヒナタは笑って話を続けたのだった。
翌日、卒業試験は始まった……
「つぎ、うずまきナルト」
「はい」
試験を受けに教室に入る。
そこには、イルカ、ミズキ他数名の教師が座っている。
「では、分身の術で分身を三体以上だせたら、合格だ」
「はい」
そう言って、ナルトは、分身の術の印を組む、
「……分身の術!」
ボンッ!!
練りこむチャクラを加減し、ナルトはわざと分身の術を不発に終わらせる。
終始沈黙が流れるが、
「失格!」
イルカの声が響く、
「まぁ、イルカ先生、彼も三度目の卒業試験ですし、最近はマジメに授業を受けていたようですし、そろそろ合格にしてあげても……」
「いえ、ミズキ先生、不合格は不合格で構わないってばよ、俺は失敗したんだし、まぁまた来年まで頑張るってばよ」
普段のナルトであれば文句を垂れるであろう、この状況だが、ナルトはあっさり引き、教室から退室した。
教室に戻ると、シカマル、チョウジ、キバがナルトの所にやってくる。
「どうだった!?」
「失格だったってばよ」
「まじかよ!お前、最近真面目に授業受けてたし、普通に分身で来てたじゃんか」
「ちっとあがっちまったみてーだ」
「ま、どんまい、ナルト」
「めげんなよ、ナルト」
「サンキュ!お前らは受かれよな!」
幼い頃から仲の良かったこの3人、大人になってからも仲は変わらなかった・・・
シカマルはナルトの補佐役として、往年は木の葉を改革した重鎮として頑張ってくれたし、
チョウジは秋道一族の長として、里を護り、家を繁栄させた・・・
キバは立派な忍犬を育て、忍としても、犬塚の長として里に貢献してくれた。
席を離れたキバ達の後で、先にわざと失格になったヒナタがやってくる。
そして、普段を装いナルトに声をかける。
「な、ナルトくん残念だったね……」
「ありがと、ヒナタ……ヒナタも残念だったな」
励ましあいながらも、お互いの空気からは、同じ空気が流れる、人生の半分以上を連れ添った2人、
隣にいるのが当たり前になってしまったナルトとヒナタは、そこに互いがあるのは当然の如く共にいたのだった。
「これからだ……頼むな……ヒナタ」
「はい」
そう言って、微笑みあうヒナタとナルトの未来は、これからもずっとお互いが側にいる未来であるだろう・・・
ここから、うずまきナルトとうずまきヒナタの外伝忍法帳が始まるのだった・・・
その日の放課後、落ち込む二人を見つめながら遠巻きに里の大人たちが口々に噂している。
周りで揶揄する言葉はナルトに対する中傷ばかりだ。
「ナルトくん」
「ヒナタ」
「大丈夫?」
「あぁ、こんなことで今更、落ち込んでいられないってばよ、また、認めてもらえるように頑張るだけだってば」
「はい……」
周りから見れば、試験に落ちて、落ち込んでいると見えるナルトとヒナタ、そんな二人にミズキが近づいてくる。
「やぁ、ナルトくんに日向さん」
『ミズキ先生?』
「2人とも残念だったね」
「別に、仕方ないってばよ、分身の術すらできないのに下忍になるなんて、任務に出て死ねって言ってるようなもんだし」
「イルカ先生は真面目な人だから……小さい頃両親が死んで、なんでも一人で頑張ってきた人だからね」
「うん、わかってるってばよ、だって……先生だけだったからさ、真正面から俺のこと怒ってくれたのも、シカマルたちとおんなじように扱ってくれたのも」
「そっか」
「でも、今年はどうしても卒業したかったんだ……下忍になって、また会おうって約束した奴がいるから……」
「ナルトくん」
「ヒナタは?どうして分身できなかったんだ、ヒナタはもう出来てたろ?」
「今日は、朝から体調が良くなくて……でも、落ちたなんて知られたら、父様やネジ兄さん、分家の人になんて言われるか……」
落ち込んでいるふりをする2人に視線をやり、気づかれないように再び視線を前に戻すミズキ、
もちろん、2人は気付いていたが……
「仕方ない、2人にとっておきの秘策を教えよう」
『えっ?』
その日の夜中……
「三代目……」
ナルトとヒナタは火影執務室に来ていた。
「ナルトにヒナタどうしたのじゃ」
「アカデミー教師のミズキに封印の巻物を盗むように言われて来ました、そうすれば卒業が許可されると言われ……」
「そうか……」
「ニセの巻物で構いませんので、ミズキをこのまま捕らえさせて頂けませんか?」
「……なるべく穏便に頼むぞ」
「はい、あ、生徒の不始末は担任には伝えないと……ですよね?」
「イルカや他の者に、この事を伝えろと?」
「うん」
「お願いできますか?」
「やれやれ、騒がしくなりそうじゃ……」
その日の夜、イルカは呼び出し招集を受け、ナルトとヒナタが封印の書(偽)を盗まれたことを知らされる。
イルカは衝撃だった、いたずらばかりしていたが、最近は真面目に授業を受けていたし、
何より立派な忍者になると言っていたナルトが、同期のヒナタを巻き込み大惨事になりかねない事件を起こしたのだ。
イルカは必死でナルトとヒナタを探した。
森の中を探す中、ナルトとヒナタの気配を感じ、イルカは慌てて駆け寄る。
「お前ら!!!」
「イルカ先生」
「あ、イルカ先生やっと来た!」
「やっと来たじゃない!……?お前たちここで何してた?」
「デートしたあと、ここでずっと修行してた」
「封印の書は!」
「?あぁ、これでしょ?ミズキ先生がこれ持ってきたら俺等卒業してもいいって言ってくれたから、俺はいいんだけど、ヒナタを卒業させたかったからさ」
「それは、私も同じだよ、ナルトくん」
「ミズキがこれを?」
「うん、でも流石に俺達も単純じゃないし、馬鹿でもないって、これ本物じゃないから」
「はぁ!?」
「火影様に事情を説明しました」
「そしたら、イルカ先生を後でよこすから3人で協力してミズキ先生を捉えられたら、卒業を認めてやるって言われた」
「なにぃい!?」
次の瞬間クナイが飛んでくる。
「あぶねぇ!ヒナタ!イルカ先生!」
イルカは自分の身は守れるだろうと判断し、ナルトはヒナタを守る。
「よく避けたな!落ちこぼれのお前にしてはいいかんしてるぞ」
「ミズキ先生」
「ミズキ」
「先生、罠にはまったのはあなたの方です、あなたを捉えれば、今夜の任務は完了します」
「なんだと!?……日向の令嬢を手篭にするんなんざ、お前も考えたな!化けギツネのくせに」
「なんだと?」
「ちょうどいいから教えてやるよ、12年前、化けギツネを封印した事件は知ってるな」
「あぁ、知ってるよ、四代目火影が自分の奥さんであるクシナさんの封印が解けて、九尾が暴れた事件だろ?そして、里を守るための俺の……息子の体に九尾を封印したんだ」
「な、ナルト……なんでお前、それを」
「三代目からさっき聞いて知ってた、そして四代目のその判断は間違ってないし、
そのせいで俺が嫌われるならそれは仕方ないってばよ、でも……少なくとも、旧家、名家の人たちは俺をそんな風には言わなかった
奈良、秋道、山中、犬塚、油目、日向、うちは、うちははともかく、この里の旧家、名家と言われる家は、俺の親が四代目・波風ミナトだって知ってる……
うらまれたってしかたねぇってばよ、俺のせいじゃないにしたって、原因は俺の腹ん中にいるんだし、イルカ先生だって、親が死んだ原因が腹の中にいる俺にどう接していいかなんてわかんなかっただろうし」
「ナルト」
ナルトの言葉にイルカは少なからず自分とてナルトを、“そういう目”で見ていた時期があったことを思い出した。
だが、それ以上に両親を途中でなくし、少なからず家族の愛を知っているイルカとは違い、ナルトはずっと1人で里の冷遇にも負けず、
一生懸命頑張っていた……いたずらするのであってもあいつはただ認めてもらいたい、自分の存在意義をみつけようとしていただけだったのに、
「気づいてやれなくて……ごめんな、ナルト」
イルカはナルトに聞こえないぐらいの小さい声でそう呟いた。
「でも、俺は俺だ!うずまきナルトだよ、腹の中にいる九尾含めて今の俺だ!
マイナスのアドバンテージなんて、上等だ!いつか絶対俺を“アレ”だなんて呼ばせないし、俺は四代目火影の息子として里を傷つけるやつは許さねぇ!」
「ナルトくん!」
「行こうか!ヒナタ!」
「はい!」
そう言って、ナルトとヒナタは、ミズキに向かって構えた。
「何する気だァ!?お前ら俺に歯向かう気か!」
「前の俺だったら、逃げて、イルカ先生に庇われていたかもしれねぇけどな、これは俺の新しい決意だ!
俺の前ではもう、誰も泣かせないし誰も傷つけさせない!そして、俺はもう、仲間は誰も死なせない、俺は!七代目火影になる男だからな!」
「火影だァ!?お前みたいな里の嫌われ者の落ちこぼれが、俺に勝てると思ってんのかァ!?」
「ナルト、ヒナタ、お前らじゃ無理だ!」
「大丈夫!見ててよ、行くぞ」
「はい!」
ミズキに正面から構える、ナルトとヒナタ、構えは日向家相伝の柔拳構えと同じだった。
「ヒナタ、お前がいくら日向宗家の娘だからって、日向の中で妹にも劣るお前に俺が負けると思っているのか?」
「そうですね、私の力は妹のハナビにも、劣っています、でも、私は自分の可能性を諦めたことはありません、あきらめる必要がないことをナルトくんに教えてもらったから」
「諦めなければいいんだ、強くなることも、認めてもらえることも、だって、みんなは俺が嫌いでもそれはずっとじゃない、未来は変えられるんだ」
「それにこれ以上、あなたの口から私の大好きな人への罵詈雑言を聞いているのは、腹が立ちますので、早々に捉えさせてもらいます!!」
そして、次の瞬間、瞬身の術でナルトは正面、ヒナタが背面に回る。
「なっ!」
目で追えないその速さにミズキもイルカも驚きを隠せない、
「んじゃま、面食らってもらったところで、行こうか!」
最初は、正面からナルトが体術で仕掛けていく、
火影就任後、ヒナタと結婚した後にナルトは日向家で体術の鍛錬を受けていた。
風性質のチャクラを持っており、それをスピードに応用することで、ナルトの体術は神速の域に達していた。
そのスピードに、中忍でそこそこ実力があるとは言え、ミズキが追いつけるはずはなかった。
ナルトの猛追にミズキがかわそうとするもその逃げ道をヒナタがふさいだのだった。
「何?!」
「ミズキ先生悪いけど、先生捉えたら卒業なんで、倒させてもらうね?」
そう言って、ナルトとヒナタは二人で同時に、ミズキの急所に次々と掌打を繰り出す。
その連打が終わった時には、ミズキは全身打撲で完治に三ヶ月はかかるであろうという結果に終わったのだった。
「イルカ先生、今回は巻き込んですみませんでした」
「まったくだ!それのあんな無茶、どうして俺に相談してくれなかったんだ」
「卒業かかってたし……正直イルカ先生に心配かけたくなかったし」
「あとから聞かされる方が心配するから、今後は事前に言っておいてくれ」
『すみませんでした』
「それと、ナルト、ヒナタ、卒業おめでとう」
『ありがとうございます』
「イルカ先生」
「ん?なんだ」
「先生の額あて俺にくれねぇ?」
「?明日になれば新しい額あてが支給されるはずだが」
「先生のがいいんだ、俺の一番最初の理解者で、俺の……兄ちゃんみたいな存在だと思ってるから、それに今日のこの決意を忘れないためにも……」
「ナルト……わかった、そのかわり大事にしろよ!」
「おう!」
気がつけば空が、明るんできていた。
その日、うずまきナルト、日向ヒナタは、下忍となったのだった……
NEXTSTORY→
++あとがきと書いて反省文と読みます++
ナルヒナ逆行第3話改訂版です。
ナルヒナ要素絡めつつ、イルカ先生の出番はほぼ空気状態でした。
原作でも好きなシーンですが、変えてしまって申し訳ないです!
イルカ先生大好きです、あんな先生がいたら絶対大人気だと思います。
そして、私の中では木ノ葉最強夫婦としてナルヒナを需要させていきたいです。
さて、次は第4話の改訂作になります。
今後とも宜しくお願いします。
改定前ですので、ご意見などありましたらお寄せいただければ幸いです。