2.わからなかった愛

















本国に帰って思ったこと、それは・・・実は私とナナリーは愛されていたんだと言うこと・・・




引っ越しの荷物が全部整った次の日の朝、
1トントラックを二台つれて、コーネリア姉上と姉上の騎士、ダールトン殿とギルフォード殿がやって来た。
「迎えに来たぞ、ルルーシュ!ナナリー!」
満面の笑顔でそう言う姉上に私達は何も言えなかった。
そう、それが朝五時に起こされて今ひとつはっきりしていない頭であってもだ・・・
本国からエリア11まで最低セスナを飛ばしても2日はかかるから、
世話になったミレイやアッシュフォードの家の人達、生徒会のみんなに挨拶をしたいと思っていたのだが・・・
どうやら姉上は時折無謀と言うことを平然とやってしまうようだ。
一緒に連れてきた侍従達によって、荷物はあっという間に運び出され、
後は私とナナリーが車に乗れば全てが終わり!と言うところまで来ていた。







「姉上、朝早くに来られてお疲れでしょう、今お茶と朝食を用意しますから・・・」
「ルルーシュ!そのようなこと、お前がせずとも侍従に・・・」
「私がしたいんです、そこに座ってお待ち下さい」
もともとあった家具を使って、私は紅茶と簡単に出来る種から作るパン、スクランブルエッグとサラダを作り始める。
時間も食材も限られているのだから、そこは容赦願おう・・・
「それにしても早いお着きでしたね、本国からいらっしゃると言うことでしたので、明日か明後日になると思っていました」
「何を言うか、マリアンヌ様の息女であり、私の大切な異母姉妹をいつまでもこんな処にいさせられないからな、
護ってくれていたアッシュフォードには礼を言っても言い切れない程だが、このエリア11はお前達にとって良いところともおもえんからな」
「姉上・・・」
「しかも、生きているお前に最初にあったのが、クロヴィスとあのジェレミアというのに些か腹が立っているのだ」
「?何故です?」
話を続けながらも準備をする私はいまいち話の内容、つまり、姉上が怒っている理由がわからなかった。






「つまりですね、自分が一番最初にルルーシュ様に会いたかったのに、なんで違うんだとそう言うことで拗ねていらっしゃるんですよ」
ダールトンに説明され、ようやく理解した。
「ダールトン!余計なことは言わなくて良い!!」
「これは・・・失礼しました」
「姉上・・・ありがとうございます、あ、朝食が出来ましたから、ダールトン殿もギルフォード殿も座ってください」
「いえ・・・そのような!」
「ルルーシュが座れと言っているのだ、恥をかかせるな、ギルフォード」
「イエス・ユア・ハイネス」
姉上に怒られ座る2人を見ると何だかとてもほほえましかった。




「物がないので簡単な物ですけど・・・召し上がってください」
「お姉様の作ったパンは美味しいですよ」
「ルルーシュ・・・これはお前が作ったのか!?」
「えぇ、昨日種を作っておいたのを焼いた物です、時間がかって申しわけありませんでした」
「なにをいうか・・・それにこれは私が好きなアイリッシュパンではないか・・・」
「姉上が好きなの思い出して作ったんです、さ、冷めないうちに食べてください」




にっこりと笑うルルーシュをみて、あぁ、生きているんだと実感する。




ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ナナリー・ヴィ・ブリタニア、




どちらとも母は違うが、私にとっては実の妹、ユフィ同様に大切な妹たちだ、
マリアンヌ様が亡くなられた後、私はこの姉妹を護ることを決意していた、それなのに、
留学という名の名目の人質としてエリア11に送られたあと、殺されたと聞かされたのだった。
自分の非力さをこれほど悔いた時はなかった。
何がブリタニアの紅の魔女だ・・・自分をただ1人の少女として扱ってくれた、
愛してくれたマリアンヌ様の大切な娘達を守れない、
なにが女を捨てただ・・・守りたい者を守れない・・・私はそれを幾度も悔いていた。
結局、あの後すぐにマリアンヌ様を殺した犯人が、ブリタニア皇族を憎む貴族のしたこととわかり、
皇帝はすぐにその家を断罪した。
表に出さないだけではあるが、あの父親、相当のヴィ家姉妹溺愛症候群だからな・・・




まぁ、表に出せばそれは気持ち悪い事この上ないのだが・・・・



そう思いながら、食事を済ませ、食後の紅茶を飲みながら、
コーネリアは、ルルーシュに話しを切り出す。




「ルルーシュ、クロヴィスに聞いたが皇族復帰後すぐにこのエリア11の副総督になるかも知れない・・・」
「兄上にも言われました、私ではまだそれは重責すぎます・・・まずは勉強しなくては・・・」
「何を言っているか、副総督になどならずとも良いのだ、お前とナナリーには少し休息が必要だ・・・
あぁ、そうそう、ルルーシュ、お前も皇族に戻るのだし、
騎士を選んでおきなさい、お前の年で騎士がいないのはいけない、近々、ユフィにも選ばせようと思っていたところだ・・・」




「騎士・・・では、ジェレミアを、幼い頃より私に使えてくれていますし、
なによりこうして皇族に戻ることになったのもジェレミアのおかげなのです・・・」
「・・・ジェレミア・ゴットバルトか・・・確かに実直な男だとは思うが・・・騎士としては些か力不足ではないか?」
「では、一緒に部下のヴィレッタ・ヌウを騎士に・・・それでもダメですか?」
「・・・もう少し検討して見ろ、もしかしたらもっと良い騎士候補がいるかもしれんぞ?」
「もう!姉上はどうしてジェレミアを認めてくださらないのですか!!」




あの男にルルーシュが人並みならぬ感情を抱いている、
それは幼い頃から見てきた、コーネリア、シュナイゼル、クロヴィスにはわかっていた。





「きっと、ジェレミアさんと仲がいいからコーネリアお姉様は妬いていらっしゃるんですよ、お姉様」
「まさか、姉上とも有ろう方がそんな個人的な主観で・・・」
「悪いか?」
「えっ?」
「悪いか!お前があの男に人並みならぬ感情を抱いているのは知っている、
だからお前をこれ以上あいつに近づけたくない、それが反対する多くを占める理由だ!」




コーネリア・リ・ブリタニア彼女はまさしく、【ルルーシュ、ナナリー、ユフィ限定だが】シスコンだった・・・





「あ、姉上・・・」
少々驚きととまどいの中コーネリアを見つめるルルーシュ、
確かに、兄弟の中でこの姉君はシュナイゼルと同じく、自分たち姉妹を可愛がっていてくれた。
自分もシスコンだと思うが、まさかこの姉上もとは・・・
「まぁ、お前の騎士はもう少し考えるとしよう、本国に帰ってから決めればいいしな」
「はい」




朝食を済ませ、食器を片づけると、置き手紙と中に鍵を入れて、ルルーシュはナナリーの車椅子を押してそこをたった。




それからルルーシュとナナリーは2日かけてゆっくり本国に帰った。
その間、ルルーシュはコーネリアに世情や世論を教えて貰い、
もともと活字中毒の彼女はセスナ内にある書庫の歴史書や雑学書などを読みあさった。
皇族としての知識も教養もあったルルーシュは、コーネリアに継いで皇女としてはとても優秀だった。
1つ下のユーフェミアはまだ学校に通っているが、
ルルーシュは、本来大学院までの学習課程を修了している。
あらゆる知識を貪欲に得ようとした結果、様々な知識も有している。
これから皇族に復帰して、エリア11の副総督になることも充分可能なことだろうと、コーネリアは思った。
本国に戻ると、それからが大変だった。




あの惨劇のあったアリエスの離宮にエリア11で亡くなったとされていた皇女達が戻ってこられる、




その話は、瞬く間に皇族達の間に広まった。
何より驚き喜んだのは、帝国宰相のシュナイゼル、この国の皇位継承者第2位を有している人物だった。
シュナイゼルはルルーシュを溺愛していた。
幼い頃、勝てはしないものの自分に必死にチェスを挑んできた彼女をシュナイゼルはとても好印象に思っていた。
だからこそ、コーネリアのセスナの出迎えに、シュナイゼル自ら向かっていた。
「おかえり、ルルーシュ、ナナリー」
「シュナイゼル兄上!?」
「お兄さま?」
「兄上!?兄上直々においでなのですか?」
「可愛い妹たちに早く会いたくてね、いけなかったかい?」
「そんなこと・・・でも、帝国宰相の兄上直々に・・・」
「帝国宰相である前に私は君たちの兄だ、心配していたんだよ?ルルーシュ、ナナリー」
「兄上・・・」
「お兄さま・・・」
うれし泣きだろうか、ナナリーの瞼には涙が滲んでいる。




「マリアンヌ様のことは、申し訳なかった・・・だが安心してくれ、
主犯とマリアンヌ様に悪意を抱いている貴族は全て断罪しておいたよ、私と皇帝陛下とでね」
「・・・ありがとうございます、兄上」
「それにしても・・・ルルーシュはますます美人になったね、可愛いよ」
シュナイゼルはルルーシュの体を抱き寄せ、頭を撫でる。
突然の事だったが、幼少の頃からこのスキンシップは当たり前だった為か、ルルーシュは和解した今は無理に引き離そうとは思わない。
「・・・相変わらず、ご冗談がお上手ですね、兄上」
「冗談のつもりはないんだけどね・・・まぁ、長旅疲れただろう?さっそく皇宮に戻ろう」
「はい」




皇宮に戻り、ルルーシュとナナリー去った後、誰も入る事はなかったアリエス宮に向かった・・・




すると、そこには・・・・




「お帰りなさいませ、ルルーシュ様、ナナリー様」
「ジェレミア!ヴィレッタも、そうか、先に本国に戻っていたんだな?」
「はい、この度ここの警護を任されました、貴方様をお守り出来る任、心より感謝しております」
「ありがとう、ジェレミア、ヴィレッタ、これから色々面倒に巻き込むかも知れないが、よろしく頼む」
「イエス・ユア・ハイネス」
笑顔で話すルルーシュとジェレミア、端から見れば良い主従関係と言ったところだが、
シュナイゼル、コーネリア、クロヴィス、ヴィレッタ、ナナリー、ユフィと一部の人間は気付いているのだが、
ジェレミアに向ける笑顔と、身内に見せる笑顔がルルーシュは若干異なった。
女性なのだ、ジェレミアに笑いかけるルルーシュの笑みが、




だが、いかんせんこの真面目、実直、堅物、朴念仁、鈍感のジェレミアと、
真面目、不器用、鈍感のルルーシュは、



まったくと言っていいほど、お互いの気持ちに気付いていない、




はてさて、この鈍感な年の差と、身分差のある、



相思相愛の2人はいつ思いを通わせることが出来るのか・・・




次の日、ルルーシュは皇帝陛下に謁見した。
幼い頃にあった父親の印象からルルーシュは決して皇帝・シャルル・ジ・ブリタニアを良いように思っていなかった。




「第3皇女殿下、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様、おいでになりました」
「通せ!」
相変わらずの馬鹿でかい声に誰もが耳を塞ぎたくなる。
だが、長年使えた人間はこれになれているのだから慣れとは時に恐ろしい物である。
「皇帝陛下、遅くなりましたが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア只今戻りました・・・」
「うむ・・・よくぞ戻った、ルルーシュよ」
「・・・・あの、父上が、母上を殺した貴族達を断罪して下さったと兄上に聞きました」
「・・・・シュナイゼルめ、余計なことを」
「・・・・私は、父上にとっていらぬ子ではないのですか?」
幼い頃、父親にその存在を否定されたルルーシュ、その時の悔しさ、
恐ろしさからこの父親とどう向き合って良いかわからなかった。



「・・・・ ・・・・」



無言の父にやはり自分はいらぬ子でないのか?
と、疑念を持ち始めたその時、
「おいおまえ、あれを持てい!」
「はっ!」
従者が持ってきたのは、苺のタルト、苺のミルフィーユ、苺・・・と苺系の菓子がたくさんあった・・・
「・・・・あの・・・これは?」
「そなたは・・・その・・・苺の菓子が好きであったろう・・・」
「・・・父上」
一度だけ、父に言ったことがあった。
自分は苺の菓子が好きで、洋菓子は特に好きだと、些細なことだ。
だが、父はそれを覚えてくれていたのだ、
そんな些細なことを・・・・




「ルルーシュよ・・・そなたはこの世界に何を望む・・・・」
「・・・優しさを・・・優しい世界を・・・」
「わしもそなたと同じ気持ちだ・・・」
「父上・・・」
「ルルーシュよ・・・わしとそなたの願いは同じ・・・優しい世界を作るために、世界統一に力を貸してくれぬか?」
「・・・イエス・ユア・マジェスティ」
今更ながらにわかった、この人は自分と同じで不器用なだけで、本当は優しい人なのだ、
でなければ、弱者は罪だと強気な発言をしていた人間が、
弱者と言われる自分に世界統一の為に力を貸してくれぬかなどといわない・・・
「ルルーシュよ、そなたに、エリア11の副総督を命じる、クロヴィスを手伝ってやるが良い」
「イエス・ユア・マジェスティ」




子供の頃の浅はかさから見えなかった家族の愛が、
今はこんなにも感じられる・・・
皇族に戻ることが悪いことのように思っていたが、違った・・・
本当は・・・戻るべきだったのだ・・・
あの時、手を血に染めなくて良かった・・・




そう、心から、安堵し、今こうして父と和解出来たことに感謝する。








今ここに、黒の慈愛の皇女が誕生した。







そして、白の破王が、生まれていることを、このときはまだ、黒の皇女は知らなかった。


















++あとがきと書いて反省文と読みます++
あれ?これって・・・ジェレルル・・・ですよね?
ですよね?何だかルル総受みたいになってるんですが・・・
ジェレルルが全くだせずすみませんでした。
次回は、ゼロ登場です。
本当に序盤はともかく、後半は白騎士さんの扱い酷いので、
苦手な方は絶対読まないでくださいね?
あ、それと、皇帝様の設定も本放送の設定とかなり違いますので、
それも嫌な方は見ないで下さい、ちなみにV.V.はでません、C.C.も出ませんので悪しからず、
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